【商業美術書感想】デッサンの55の秘訣(バート・ドッドソン著/マール社)を読んで

デッサンの55の秘訣感想OGP(感想カード) 空閑屋の卓上本棚:【美術書感想】デッサンの55の秘訣(著・バートドッドソン,翻訳・田辺晴美) 優しい語り口で、現実の美しさをあるがまま尊ぶような教師が浮かぶ。 デッサンらしいデッサンをしたことがないスライムが、どうにか向き合おうとしたときに触れた一冊。

(2018年に別所で投稿したものを再掲したものとなっています。)

前提条件
読み手のスペック:
 ・表紙絵を描けるようになりたくて足掻いている文字書き。
 ・デッサンらしいデッサンはしたことがない。(記憶にほとんどないが学生時代美術の授業でやったかも? くらいでそもそも模写とデッサンの違いとはレベルの知識)
 ・模写はあくまで模写っぽいなにかレベルでコツコツやっているだけの独学マイペース

読んだ理由:
 ・描けないならデッサンをやってみれば、というような言葉を以前数回頂戴したため

苦手意識:
 ・きちんとかかなければいけない、と考えるのが苦手。
 ・写真を模写するのは平面→平面だが、立体を描くのは立体→平面で非常に難しそう

 読んだだけなので課題はまだ(今後時間を見てチャレンジ予定)です。以上をふまえた上で単なる覚えかきのような読書感想ですが思考のメモ。

 * * *

本の簡易感想:
 ・教科書っぽい
 ・語りかける著者の言葉がやさしい(優しくと易しくなるようにの二つの意味で気を遣っているように思える)
 ・著者が楽しいよ、と伝えたいのが伝わってくる
 ・最初は苦手意識がバリバリと刺激されたが、後半はだいぶ慣れて楽しく読めた
 ・課題に対して時間、道具を指示しているのでわかりやすい。特に時間は現状と力量の中で目安になる
 ・課題が進むに従い、個人では困難なものが増えていくので代用品や方法を探す必要がある

 以下各項目について雑多に記述。

・教科書っぽい
 55の秘訣について最初から最後まで、順番を考えて配置されている。著者は最初から順番に課題へ取り組むことを推奨しており、話の流れも一冊綺麗に配置されている印象。ただ、別に好きな箇所からやってもいいよ、ともあるのでわかっている人にとってはとびとびでも問題ないのだろうと思う(章ごと課題自己採点シートがあるので区切りもわかりやすい)。自分のような完全な初心者には、教科書的でありひとつずつわかりやすかった。
 課題一つずつ行ったことが後にも積み重なる印象だが、なにをみてどう自己評価すべきか、というのが課題に記載されており、自己採点でも記載があるのでわかりやすい。
 実際自己評価できるかは別だろうが、たとえばその項目で教わった手法を何回使えたか(最低でも何回やろう、のような記述がある)といったわかりやすい基準も記載されているので、著者が先生として近い位置にいる印象になる教科書、というのが読んだ心証。

・語りかける著者の言葉がやさしい(優しくと易しくなるようにの二つの意味で気を遣っているように思える)
 上記でも記述したが先生の距離が近い。また、楽しむこと、絶対ではなく手法としてこういうものがあるという語調のため、強制的な圧迫感が少ない。
 楽しいを見つけてもらうため、その筆が止まらないようにするために優しくよりそうように言葉を選んでいる。易しい、についてだが、正直にいえば私のような門外漢にとっては時々「?」となる単語などはある。だが、ひとつずつその項目でどのように、ということを伝えるのと、著者がどのように考えているかを伝えているため、自分のような文章理解タイプにとってはだいぶかみ砕かれている印象でもあった。
 逆に先述した教科書ともあいまって、専門的に勉強してきた人にとっては今更な本かもしれないが、自分のようなタイプには丁度よく、また項目で分けられており著者の信条も心地よいため、復習につかう、という人にもいいかもなあとぼんやり思った。

・著者が楽しいよ、と伝えたいのが伝わってくる
・最初は苦手意識がバリバリと刺激されたが、後半はだいぶ慣れて楽しく読めた
 こちらはほぼ同じなのでまとめて。
 著者の語調とかぶるが著者の楽しそうな様子は非常に好ましい姿だと思われる。厳格な先生と言うよりは、経験豊富で熟練の、おだやかでおちゃめな先生というイメージ。
 ただ私自身が生徒としてふさわしいタイプではなく、「世界を愛するから美しく描きたい」という動機を持たない、正直に言ってしまえば「小説の表紙を描くためにそれなりにまともな絵をかけるようになりたい」という不純さのため、その楽しいよに共感ができない苦手意識がでてしまった点はあった。
 現実にあるものがいかに素晴らしく、素敵で、楽しいか。そういう世界を広げて見させてくれる著者の言葉は、おそらく絵を描く人にとってはきっと前を向く、頷くものだと思う。しかし先に述べた不純な動機なので、私は「物語をいかに描き出せばいいか」に重きはあっても世界への興味は実のところ薄く、著者の楽しいよ、の言葉にたびたび「ごめん、それはよくわからない……わからない……」と背中を丸めてしまうという相性の悪さだった。
 ただ、私自身は「楽しそうに語る人」が好きである。そしてその楽しそうな人を見て、「私もやってみたいなあ」と思う程度にゆるい考え方の人間でもあった。
 課題についてはやることがまだほかにあった為行ってはいないが(休みの度に現在練習中の小説の宣伝絵を(表紙絵を描く練習がてら試しに)描いていたのだが、まったく終わらずデッサンの課題をやる余裕がかけらもなかったので課題をやらずに一回でいいから目を通す、が今回の私の目標だったのだ)、最初の時言葉と課題を眺めながら「難しいです先生」とべそべそした気持ちが、後半になってくると、「わかるにはまだまだ足りないけれど、確かに楽しそうだ」となる程度には順番に、一個ずつ向き合う気持ちを作って貰えた心地でもあった。

・課題に対して時間、道具を指示しているのでわかりやすい。特に時間は現状と力量の中で目安になる
 これは端的に書いたとおりである。ペンはなにをつかえばいいか、どのように取り組むかが課題に明記されているのでわかりやすく、最低時間でも制限時間でも、「このくらい時間をかける」というのがわかるので、どれくらいじっくり課題を見て行うのか、また自分がどのくらい遅いのかなどがわかってよかった。
 現在写真の模写っぽいこと(完全な模倣ではなくだいたいを知るための簡易だが)をしているが(詳細はタンブラにある # 写真模写 参照)、時間が随分かかっている。画材や方法が異なるとはいえ風景を描くのに記載されている時間が大幅に違うので、現在の自分の状況と目標値として設定がしやすくて助かる、と思った。
 実際時間があるとどういった流れが望まれるのか見やすいので、この表記は自分にとって安心するものに感じられた。

・課題が進むに従い、個人では困難なものが増えていくので代用品や方法を探す必要がある
 これについては自分の都合だが、著者がユーモアでモデルに友人をおだててなど言ってくれても中々人にモデルを頼む、ということは難しい。また、課題の道具なども野菜など程度なら問題ないが、その先は少し自分で手に入れづらいものが多く、おそらくそういったものを入手しやすい人、触れやすい人が対象なのだろうと感じられた。自分のような門外漢の文字書きでは流石に著者も想定外だろうし仕方ないのだが、中々一人ですべてを行うには難しさを感じる。
 できる課題だけ取り組もうと思ってはいるが、このできないものがある、は、少し自分にとって気持ちが下がるものでもあった。ただ何のためにその課題があるか明記されているので、できる限り代用品などを探して取り組みたいと思う。
 しかしモデル含め諸々難しい……文章には資料と言うことでお金がかかるが、絵も絵で中々そういった課題があるので多少自分の中で考え向き合っていかなければならないな、ということを実感した。

 最後に雑感。

 表紙絵を描けるようになりたい、と毎回ことあるごとに言っているが、自分の絵柄があまり見栄えのあるものではなく、そして好きな絵は地力ががっつりものを言うような、当たり前を魅力的に描くものだから基礎値がほしくて諸々手を出している。その一環がこの本を読んだ理由だ。
 正直自分の絵柄も方向性もどうやっていけば文庫本の表紙絵っぽくできるのかもわからないのでそういう教本があったらほしいくらいだが、そんな都合よくいくものでもなく、ただ自分の絵はバランスが崩れていると目立ちやすく、勢いで押し出すような絵でもない、という自覚だけがある。キャラクターの表情や所作、それらがどうして、ということを考えるのは好きだが(そもそも小説が元なので全部意味を込めた文字を書くような絵が好きだ)、表紙絵、となると情報をある程度捨て、精査しながら描かねばならず、その場合シンプルだからこそ地力がいるのだろうと思って取り組んでいる。
 そういう不純な動機なので、今回の本については正直「地力がほしいもののここまでガチッとしたものは私に合うのだろうか」「完璧を目指そうとするとできなくてへこむし文字書きだからそこまで絵に取り組めない」「目の前にあるものをリアルに描きたいのではなく、どちらかというとリアルにあるものを平面的に落とし込みながら、シンプルに、見る人がすっと自然に見えるものがいいのでデッサンほど書き込むものは方向性が違うのでは?」などと不安が多く、購入にも実はだいぶ時間をあけて手にしたものとなっている。それでも手に入れるきっかけは別にあったのだが、とにかく手に入れたのだからまずは読んでみよう、で読んだ感想がこの記事だ。
 結論を言うと、読まないよりは読んだ方がよかった、と思えている。実際自分のこの練習が無駄な努力と言われたらどうしようもないが、そもそも他にやり方がわからないのでやっているのだから、やる前よりもポジティブになにか得られたら自分にとっては上々だ。そして読んだことで実際描くときの意識も多少変わったので、よかった、と思う。
 おそらく私は、課題は課題としてやっていくつもりだが絵を描くにあたってデッサンをそこまで主軸にしない、と思う。とくに静物をモチーフに描く、ということにはそこまで自分の中でせねばという感情が生まれにくい。なら自分にとってこのデッサンというものはなんなのか、というと、「アイテムを手に入れるもの」なのだと思った。
 たとえばテクスチャの話で、どういったテクスチャが全体に効果を与えるのかとか、相互作用とか。自由筆跡と制御筆跡の話とか。こういうものをみて、自分が今描いている木の葉っぱでうまくかけたと感じるときとなんだか随分雑に見えてしまうときの違いはおそらくエッジの表現だろうとか、テクスチャの規則性だろうとかそういうのがなんとなく気づけたりとか。実際直るかどうかといったら、知ったところでそんな簡単にうまくいったら絵が描ける人間なわけで。それでも気づいたからには描くときに注意して、うまく統一や雑然ができないときは「自分はこの線が手癖なんだな」「自分はこういう線が引きづらいんだ」と頭の端にとどめて向き合うことができる、とか。
 描けないこととなにが必要かを知るにはいい本だったと思うし、これからデッサンをするとき自分はその線の効果がどう見えるかを意識して、普段の絵に取り組むんだろうなあと言うイメージもできてきた。多分、デッサンできっちり描くようなあのがっつりした絵を自分は描かないけれど、でもそうやって課題と向き合ってどんな表現があるのか知って行くには、なるほどデッサンっていいなあ、と思えたのが収穫でもある。
 実際どこまでこれを使っていけるかはわからないが、読んで楽しかったので自分には良かったのだろう。次は構図の本を読む、かな……小説と違ってこれらは随分読むのに時間がかかる、かみ砕くものなので少しずつ読み進めないといけない。課題はゆっくり手を出すこと。
 正直に言うと本当遠回りというかぐねぐねとした道を五里霧中暗中模索という感覚で不安しかないのだが、やらないよりはやるのがましを合い言葉にやっていくしかないのである。なんども言うのは自分に言い聞かせる心地だからだ。効率よく課題に取り組んだり、逆に自分の得意分野をのびのび伸ばすなど、できる人は羨ましいが自分はどちらもできないから探っていくしかないわけで。

 努力は人を裏切るとよく聞くけれど、なるほど確かにとうなずきながら、かといって「裏切られるからやらない」よりは、その時間代わりにやりたいものがない限りは自分の手が伸ばせる範囲でコツコツやるしかないんだよな不器用な人間は、と思っている。
 自分の良さを伸ばして特化型がいい人もいるけれど、自分は特化させる場所が浮かばないし(どちらかというと文字特化型だと思うがそれを言ったら表紙絵がかけないのでないないだ)今現在は手当たり次第、ここを掘り下げたいがでてからそこに集中するでもいいかもな、と思っている。
 手当たり次第手を出して雑然としていないか、逆に惰性になっていないか不安になるのでその度に、「他にこれをやりたい以外に理由がないのなら、やらない理由をあれこれ探すのではなくとにかく手を動かせ。お前は効率などない向き不向きで言ったら向いていない人間なんだから徹底して地道にやるしかないんだよ」と自分をぶん殴るのである。
 文章を書く、さえ守り通せれば結構これらも楽しいし、無意味じゃないかなあという不安は「知識は糧」でぶん殴るのだ。
 そんな自分へのごにゃごにゃした思考をさらしたところでとりあえずデッサンの55の秘訣読了しました、という感想文おしまい。

 最後に「とりあえず試すだけ試したデッサン課題1」とデッサン課題に取り組む時間を全力で食いつぶした「落書き試し書きのつもりがどちゃくそ長くなった新作の宣伝用絵」とを置いておきます。やってないさんざん言ったけどこれ公開するには一個やっときたくてやりました。

デッサン課題1-A足

反省点
・課題時間1時間30分以上だったが、40分しかかけられなかった。圧倒的に画題を長く見る力がない。
・見て描く、というアウトラインを一発でとる能力が無い。全体をぼんやり描いてからイメージに近づける消しては描くタイプなので一発書きがきつい。重ねがきというレベルじゃ無い描き直しになってしまう(この絵でも縦に長すぎている)
・途中でなおせないのが大分ストレス。そのストレスを埋めようとして余計画題を長く見られなかった気もする。
課題
・次の課題にいくでもこのまま同じ課題を繰り返すでも良いが、「長く見る」習慣を少しずつ付ける(いっぺんにはむりなのでゆっくり)
・アウトライン一発書ききついのはわかったので普段の微調整とアウトライン一発を意識して練習する

宣伝用絵

反省点
・横須賀の髪がさらさらしすぎたので漫画表現とリアルの差を考える
・背景が突貫過ぎて色々バランスがとれてないので全体イメージ考えること
・時間かけすぎ問題
・違和感が無い、から魅力的にすること。現状どっちも難しいので。
・想像力と現実の資料のバランスを考える

 成長するといいなーーーーーーーーーーー! 来年本だしたいので頑張って私!!! 中身はとっくに完結してるのにね、畜生!!

(感想思考の言語化というより単なる自分へのカツ入れになってる気がするけどまあ自分のモチベーションと自己理解の為なのです)
(アドバイスもらっても自分の現在の力量でしか練習は続けられないダメ人間だけれど、こういうのもあるよ、とかありましたら教えてほしいです。やるとはいわないけれど数年後やるかもしれない(デッサンアドバイスも結構前だった))
(自分のできる範囲でしかやらないからアドバイス求めづらいんだよなあ)

 最後までぐずぐずでしたが、ここまで読んでくださった方いたら有り難うございました。
 マイペースに頑張ります。私の物語は私のものだ!(からお前が描くしかないんだよ!!)

(2018/05/20)

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